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○前田 
「アンネの日記」のああいう状況をどんなぐあいに歌うんだろうと思いましたね。そういうところが、やっぱり「アンネの日記」のミュージカルというのが信じられないままで公演を見逃した人が多かったと思うんだけれども。
次の機会に、例えば夏休みだか冬休みだかという時期に、「アンネの日記」はミュージカルになったんだという認識がみんなにできた上でもう1回おやりになると、お客がもっとふえるんじゃないかなと僕は思っているんですけれどもね。

 

○山下 
これは大阪だけのケースかもわかりませんけれども、大阪というのは、東京で前評判がよくても、大阪で実際に見て評判を確認しないと客が来ないという土地柄なんです。私は、かつて梅コマ時代に、宣伝をやっていたころに、森繁久弥さんの「屋根の上のヴァイオリン弾き」が初めて大阪で上演されたときに、大入りを確信するまで1週間かかったんですよ。森繁さんが、大阪はやっぱりあかんなあと言い出したときに、ぽんと切符の当たりがふえましてね、食いつくと、徹底的に売れましたね。あれだけ何百回東京でやってきて評価を得たにもかかわらず、初日あく前にソールドアウトにならないみたいなもどかしさ。

 

○前田 
その辺の話をもう少し細かく、具体的にしてくれませんか。

 

○山下 
例えば森光子さんという女優さんがいますね。彼女が、大地真央さんと多少似通っているんだけれども、「放浪記」をやれば超満員になる。ところが、悪いですけれども、これは飛天の例ですよ、「放浪記」以外の演目は不発に終わっている。
だから、やっぱり日本のお客様の好みというのは十八番。例えばドラマシティでやった事例としては杉村春子さんの「華岡清洲の妻」、これは大阪で5ステージやったんですよ。文学座は5ステージもやった事例はないんですよ。その5ステージが完売しまして、東京で評判になりました。
平淑恵さんの「女の一生」は4ステージやったんですが、これは残念ながら60%台で終わりました。なぜかというと、平さんはものすごくよかった。非常に自然で、芝居も最近の女優劇があれを超えないぐらいよくできた芝居ですけれども、いかんせん杉村春子さんの功罪というのか、余りにも観客の年齢層が高年齢に偏り過ぎています。それは私の経験で、例えば美空ひばりでも全盛期のすごいときと晩年のときと、やっぱりファンの年齢層が彼女の年齢と同じように成長している。若い人がくっついてきていないんですね。だから、文学座さんもこれから平淑恵を看板女優に仕立てていくには、もう10代、20代若い観客層、平淑恵と同じような観客層のファンをどう取り込むのか。だから、プロデューサー

 

 

 

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